とくみつのひきこもり相談ブログ

7年3ヶ月ひきこもり無職の後、働き始めました。
ひきこもり無職の間、怖い経験をしました。
このブログは自分と同じ目に遭ってほしくないという思いで立ち上げました。

幻聴に殺されそうになった話-4「幻聴」

 幻聴から解放され少し眠ることができた。
 目が覚めると、


「聞こえてるって言って」


 ぞっとした。突然のことに全身に鳥肌が立ち大量の冷や汗をかいた。今まで聞いた幻聴の中で一番はっきり聞こえた。もう現実の声と区別ができない。
 恐ろしく抑揚を落としたその声はこう言うと失礼かもしれないが声優の皆川純子さんか高山みなみさんのような声だった。
「聞こえてるって言って」
 繰り返し抑揚の無い声で言われた。
「聞こえてるんでしょ? 聞こえてるよね?」
「お前は誰だ?」
 こう問いかけたらこれでもかと悪意が混じった喋りを始めた。
「お前? お前って……ハハッ、いいのかな? そんなこと言って」
 なんだ? いったいなんなんだ?
「なんだと思う?」
 こいつ、とすら言ってはいけない。逆らってはいけない。衝突してはいけない。なぜだか分からないが本能でそう感じた。
「ねえねえなんだと思う?」
「天邪鬼?」
「ある意味そうかもね」
「悪魔?」
「悪魔ぁ? それもいいねえ悪魔ぁ」
 発する単語の一つ一つに悪意が篭もっている。
「いたずら好きの神様?」
「惜しい! かも!」
 もう一つ思い付いていたがとても口には出せなかった。

「死神」と。もしそうなら自分の命は長くない。


「……幻聴さん」

「ん?」
「とりあえず幻聴さんと呼ぶ」
「まんまだな。まあいいけど」
 正解を知るのが怖かった。
「じゃあこの声が聞こえる?」
 幻聴さんがそう言うと虐待されているあの子供の声が聞こえてきた。
(出して! ここから出して!)
 なんだ!? 助かっていないのか!? 母親だけ助かったのか?
虐待していると思われた父親の声も聞こえてきた。
(気付くのが遅すぎるんだよ! お前今まで騙されていたんだよ!)
 なんだって。じゃあ母親は?
「あれ俺。ついでに途中の他の声も全部俺」
 幻聴さんはあっさり答えた。
「騙したの?」
「そう。……ぷっ、あっはっはっは!」
 幻聴さんはまた悪意たっぷりに笑った。

 その悪意は今まで生きてきた中で最も苛烈なものだった。
「ねえねえどんな気持ち? 怒った? ニート怒った?」
 だが不思議と怒りは湧かなかった。そうか。騙されていたのか。
「あれ、怒らないんだ」
 幻聴さんは少し意外そうだった。
「じゃあ状況は分かる?」
 何も解決していないってことだけは分かる。
「聞こえてるって言って」
 またか。素直に言う気にならない。父親の方はもうひどくおびえている。
(助けてくれるって言ったじゃねーかよ!)
 はい? あなたには助けるとは一言も言ってないが。
(言ったよ!)
 なんなんだ? そういえば子供の声がまた聞こえなくなった。
「聞こえてるって言って」
 幻聴さんはずっと同じ言葉を繰り返している。
「聞こえない」
 と言ってみた。
「つまんねー奴だな。聞こえてるって言って」
 このままじゃ埒が明かない。ここまで幻聴がはっきりしているようじゃ
解決は無理かもしれない。こうなったらとことん付き合ってやろう。腹をくくった。
「聞こえてる」
(キコエテル)
 また全身に鳥肌が立った。
 合成音声のような声の主は虐待されていると思った子供だった。
(うわあああ!)
 父親が悲鳴を上げた。
 もう一度「聞こえてる」と言ったらまたその子供は
(キコエテル)と言った。
 これは僕の声を復唱しているのか。


「少しは真実に近づいたかな」
 幻聴さんは楽しそうだ。

 これは父親と思われる男が人工精霊かタルパみたいなのを作ったのか?
「半分当たり」
 半分? いや幻聴さんの言うことを鵜呑みにするのはまずい。
だが人工精霊だとしたらそれが暴走しているのか。
(なんとかしてくれよ!)
 男はもう大人とは思えないほどおびえている。なんとかしてくれと言われても僕は今新幹線の中で広島に向かっている。
(なんで新幹線にいるんだよ! ありえねーだろ!)
 あなたに殺されると思って逃げた結果だ。なんとかしたいのはやまやまだが解決するには実際に会うしかないかもな。
「というかあなたはなんで逃げないの?」
(お前新幹線にいるんだろ?)
「はい」
(聞こえてるんだろ?)
「はい」
(どんなに離れても聞こえるんだよ!)
 逃げても意味無いってことね。
(ニートワイマキョウトダヨ)
 なんか実況し始めた。


 つづく


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