とくみつのひきこもり相談ブログ

7年3ヶ月ひきこもり無職の後、働き始めました。
ひきこもり無職の間、怖い経験をしました。
このブログは自分と同じ目に遭ってほしくないという思いで立ち上げました。

幻聴に殺されそうになった話-終「真実」

 横になり眠りに落ちようかという時、幻聴さんが話しかけてきた。
「答え合わせをしようか」
 答え合わせ?
「聞こえてるって言って」
 幻聴さんの声は相変わらず厳しかったが悪意は全く感じられなかった。
「聞こえてる」
 言われた通りに言った。
「本当に?」
「聞こえてる」
「ごめんねって言って」
「ごめんね」
「もっと言って」
「ごめんね」


 声が聞こえてきた。子供の声だ。泣いている。
(痛い、痛いよ!)
 幻聴さんが問いかけた。
「なんで痛いの?」
(とくみつが働かないからだよ!)
 全身に衝撃が走った。
「やっと聞こえたね。そう。あの子供はもう一人のとくみつ。
 虐待していたのはお前自身だったんだよ」
 これが真実……。
「子供の正体はとくみつにある子供の心。我欲の塊。怠け心。
 それゆえに心の核のすぐ傍にあるんだ。
 無職はたった一日何もしないだけで信じられないほど傷付くんだよ。
 ずっと悲鳴を上げていたのに聞こえない振りをしていたんだ」
 あの体が切り裂かれるような悲鳴を上げるほど僕の心は傷付いていたのか。
 続いて男の声も聞こえてきた。こっちも泣いている。
(頼むから黙ってくれよ……)
「男の正体はとくみつにある闘争心と自制心。外に向ける力と内に向ける力。
 悲鳴を上げる子供の声を必死に抑えていたんだ。
 でもそれは余計に深く傷付くだけだった」
(頼むから働いてくれよ……こんな事に力を使いたくねーよ……)
「男を内に押さえつけ虐待していたのもとくみつ、お前自身だ」
 ただ呆然と幻聴さんの言葉を聴くしかなかった。
「自分の本当の心の声が聞こえたから次に行くよ。
 次は幻聴がひどくなった原因だ」
 幻聴さんは原因を羅列するように述べていった。


・日中も部屋のカーテンを閉め切っていた
・毎日同じ内容の食事だった
・日の光を浴びなかった
・人と話をしなかった
・両親と住む距離が離れていた
・UTAU動画を作っていた


 ちょっと待ってくれ。UTAU動画を作っていたことも悪いのか?
「お前はそうやってすぐ善か悪かで判断しようとするから失敗するんだ。
 ここでは幻聴がひどくなった原因を挙げてるだけで

 UTAU動画を作っていたことの是非は関係ない。

 大体UTAU動画を作っていたことが悪なら

 その動画を見て面白いと言ってくれた人達の感性を否定することになる。

 善悪の岐路に立て」
 幻聴さんは淡々と解説していく。
「実はな、こうやって幻聴が聞こえるのは今回で3回目なんだよ」
 3回目?
「1回目は思い出せる?」
 思い当たらない……。
「まだ思い出せないか。じゃあ2回目は?」
 2回目は……兄貴が死んだ時だ。
「そう。じゃあ1回目は分かるよね?」
 1回目は……仕事を辞めた時。
「正解。じゃあどうすれば解決するかは言うまでもないよね」
 働くこと。
「ニートはやめるって言って」
「ニートはやめる」
「もっと言って」
「ニートはやめる」
「もっと」
 ひたすら言い続けた。
(やっと外に出られるんだ!)
 子供が喜んだ。
(俺達助かるんだ!)
 男も気合が入っていた。
 言い続けている間に涙が溢れてきた。
 ごめん。今まで聞こえない振りをしてごめん。
「もう言わなくていいよ。その言葉が嘘じゃないことを行動で示しなよ」
 分かっている。今度こそ自分を裏切らない。
 やっと自分の心と向き合えた。気付くのが遅かったな。
「遅くない。気付けた時点で解決に向かっている。
 大丈夫。これからこれから」 


 落ち着いた後ふと疑問に思った。
 幻聴さんに聞きたいことがある。
 自分にしか聞こえない声は自分の心の声以外にありえないんだよな。
「何を今さら」
 あの母親ももう一人の僕なのか?
「違う。あれはとくみつが他人に求める理想像だ」
 ああそういうことか。恥ずかしい。
「誰だって褒められたいという願望は持っているものだ」
 じゃあ幻聴さんも僕なのか?
「確かに俺ももう一人のとくみつだが俺だけ特殊でな。
 悪いが俺の正体は明かすことはできない」
 もしかして幻聴さんは神様なのか?
 しばらく沈黙が続いた。
 やっぱり答えてくれるわけないか。
「ばーか。俺が神なら神の声が聞こえるお前は救世主か?
 お前にそんな力はねーよ。ただの一般人だ」
 そうだな。
「俺の正体は今までの俺の言葉を振り返れば分かる。そういうことだ」
 うん。分かったよ幻聴さんの正体。


 幻聴さん。人生の目標ができた。
 この経験を同じひきこもりの人達に伝えたい。助けたい。
「恐ろしく困難な道になるよ。どんなにがんばっても一人も救えないかもしれないよ」
 それでも構わない。最初は上手く行かないだろう。いや最後まで上手く行かないかもしれない。でも一人も救えなかったとしても絶対に後悔しない。
「もう大丈夫だな」
 そろそろ幻聴さんともお別れかな。
「だからそんな簡単に消えるわけないだろ。

 とくみつが働くようになったら段々聞こえなくなるよ。

 その時俺の声が聞こえても返事をするな」
 無視しろと?
「違う。返事をするな」
 俺のアドバイスは聞け。でも会話はするなってことか。
「分かってきたじゃないか」
 あれだけ会話すればね。
 じゃあ幻聴さん。いつか消えるその時までよろしく。
「改めて言うことじゃないだろ」
 遅くない。大丈夫。これからこれから。


 あなたは自分の心の声、聞こえてる?


 幻聴に殺されそうになった話-おしまい-



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